SCHWALBE ラジアルケーシングのMTBタイヤが発表されて約1年半、海外で流通が始まって1年、日本に入荷して半年。
オフロードの走行時間も累計50時間以上は行ったということで、そろそろこのタイヤについて語ろうと思います。
そもそもラジアルタイヤとは何ぞという話ですが、タイヤを構成するケーシングという繊維の層が通常のタイヤ(バイアスタイヤ)であれば進行方向に対して45度で重なり合い交差しているのですがラジアルタイヤはその言葉通り放射上に配置されております。詳しくは「ラジアルタイヤ 構造」とかで検索して下さい。
ここでメーカーより提供された資料を見てみましょう。
おう? ラジアル謳ってるけど角度ついて交差してますやないですかどういうことですのん?
まぁ、ここでRadialの定義について議論するのは不毛なのでそれはいったん預けつつこの従来よりも浅い角度でケーシングを交差させるのがSCHWALBEのいうところのRADIALであるということで納得ください。
画像を見て従来のものより角度が浅いのは理解したとしてじゃあこれ何度なんですかと尋ねてみたのですがschwalbe本社からの回答はありませんでした。
なので測ってみました。75°ですね。74.9°とか刻む合理的な理由も思いつかないのでたぶん75°で間違いないでしょう。SCHWALBEのラジアルケーシングの角度は75°これは別に覚えなくても構いません。
能書はこんな感じです。納得して先へ進みましょう。
ここでライダープロフィールとバイクプロフィールを
age:45
hight:178cm
Weight:178lb
bike:Yeti SB150
Frt Tier:schwalbe ALBERT GRAVITY PRO/ULTRASOFT 29x2.5
Rear Tier:schwalbe ALBERT GRAVITY PRO/ULTRASOFT 29x2.5
装着したのはALBERT
ドライ、ハードパック向けタイヤでは定番の2:3パターンでハイグリップが期待できます。MAXXISのASSEGAIやCONTINENTALのXYNOTALなんかも2:3ですね。
WHISTLERのビッグスラブにチャレンジすることを想定していたので前後ともGravity PRO/ULTRASOFTの組み合わせにしました。
(写真はイメージです)
箱から取り出してすぐに感じるサイドの柔らかさ。
ペラペラではなくしっかりとした厚みを感じられるものの指でつまむと比較的軽い力で変形します。
そういうわけですのでこれは相当しなやかなタイヤだぞと装着前から期待が高まると同時にいつもの空気圧のセットアップではマッチしないのではないかと思い、普段よりも高めにセッティングすることにしました。
Frt:1.7bar
Rear:1.8Bar
タイヤにもよりますが普段は1.3〜1.6Barくらいの範囲でセットすることが多いので個人的には少々高めです。
余談ですがこの前に履いていたタイヤとセットアップは
Frt:schwalbe MAGICMARRY SUPER Gravity/ULTRASOFT 29x2.4 1.3〜1.5bar
Rear:schwalbe MAGICMARRY SUPER DH/ULTRASOFT 29x2.4 1.4〜1.6bar
こんな感じです。シュワルベ大好き。
ちなみに、Schwalbeのタイヤセットアップで悩んだ方はぜひこちらを参照にしてください。
Ask the schwalbe MTB PRESSURE Prof
ライダープロフィールやバイクプロフィール、ライドスタイルなんかを入力すると推奨空気圧を出してくれます。
ちなみに新型のラジアルタイヤはまだ反映されていません。はよやれ。
さて、前置きは終わり。いよいよライドスタートです。
今までのタイヤとは一線を画すグリップの良さです。このグリップという言葉にはグリップ性能だけでなくトラクション性能、ブレーキング性能を含みます。すべてのMTBタイヤを過去のものにするといって過言ではありません。
例えば上から覗き込んで木の根っこや岩の段差が斜めに走るスティープな下り。転倒したらどうしようと躊躇するような場面でもこのタイヤならハンドルを捕られることなくまっすぐ降りられます。バンピーな路面でもタイヤが弾かれません。当然乗り心地も良い。
最初はタイヤの限界を見極めながら恐る恐る下っているのですがだんだんと「このタイヤ、すごくない?」と感じるようになります。かなり不安定なラインを選んでもタイヤががっちりとサポートしてくれて狙ったラインを通してくれるので少々難易度が高い場面に出くわしても「このタイヤなら、イケる!」とヘッポコに勇気を与えてくれました。
どうしても性能を定量化しにくく抽象的な表現にならざる得ないのですが3つの単語で纏めると
「滑らず、弾かれず、止まる」
ここに集約されます。MTBハイグリップタイヤの目指すところはおおよそここだと思うのですが、この性能が圧倒的に良いんです。同一空気圧で接地面積30%増はフカシじゃありません。誤解を恐れずに言うのであれば今まで発売されたどのタイヤより良いです。それはそうです、今までのタイヤ設計と根本が違うのだから。
漕ぎの重さや転がりの重さへの意見も散見しましたが私は殆ど感じませんでした。
通常よりも高めの空気圧で運用しても従来型のタイヤよりも優れたグリップを発揮し、くわえて同等の転がり軽さがあります。
一方、通常と同等の空気圧で運用すれば転がりの重さはでるものの異次元のグリップと安定感を得られ、中低速ではとても安定感があります。ただし高速域においてタイヤが腰砕けになる感じは否めませんのでこういう運用方法もあるけれども、基本的には高めの空気圧で運用した方がこのタイヤのメリットを享受できるのではないかと思います。
私は常時高めの空気圧で使用していたので転がりの感覚は従来のものとそんなに変わらないのにえらくグリップするなーという印象でした。ここまでタイヤの性能が良くなるとサスペンションのセットアップにも影響を与えるのではないでしょうか。
コンパウンドだけではなくケーシングを含めたタイヤ全体での衝撃に対する減衰機能が優秀であるように思います。そしてコンパウンドに頼らないグリップの良さがあるということは、摩耗したのちもある程度タイヤの性能を担保するでしょう。
従来のDH、グラヴィティ、エンデューロ系のタイヤはどうしても硬くなりがちで空気圧を減らすことでタイヤの変形量を増やしグリップを稼いでいましたが、そうすると今度はリム打ちによるパンク、リムの破損といったトラブルが発生しました。それを避けるためにより厚くより強く、さらにはタイヤインサートを入れて物理的にタイヤとリムを保護するといった方向へ進化してきました。
タイヤを薄くすれば空気圧を上げてもしなやかになるしリム打ちも防げるのでは? それはそう。でもサイドカットなどの物理ダメージに弱くなるのでやはりこれらのジャンルでそれは使えません。
Shwalbe ラジアルケーシングタイヤはタイヤの厚み、強度を担保したまましなやかさを獲得することができました。
これによって空気圧を上げつつ十分なグリップを得られ、加えて高い空気圧がパンクやリムの破損も防ぎます。そう、つまりタイヤインサートを排することが可能なのです。タイヤインサートを無くすことで軽量化とエアボリュームの増加による乗り心地の改善が見込めます。
そもそもの開発のきっかけがCommencal/mucoffチームからの「タイヤインサートを使用せずに戦えるタイヤ」というリクエストらしいのでこれには納得しかありませんね。余談ですが、これはMOTOトライアルのタイヤからヒントを得て開発に至ったそうです。
従来と同じ空気圧で30%の接地面積像とありますが、じつはこれ05.bar(7psi)増でも10%の接地面積増を謳ってます。どちらかといえばこっちが肝なのではないでしょうか。Amaury Pierronはフロント1.95Bar、リア2.1Barくらいで使用しているそうです。
【タイヤパターンとコンパウンド、ケーシングについて】
現在SCHWALBEからリリースされているラジアルケーシングタイヤは
パターン4種
・ALBERT
・MAGICMARRY
・Shredda Frt
・Shredda Rear
ケーシング2種
・Trail Pro
・Gravity Pro
コンパウンド2種
・SOFT
・Ultra SOFT
となっています。
今回使用したALBERTは最初からこのラジアルケーシング前提で設計されておりドライ、ハードパックといった乾いて絞まった路面と相性が良く特にWHISTLERのビッグスラブにはベストマッチだったといっていいでしょう。半面泥ハケはそんなに良くはないのでウェットコンディションやマッドコンディションにはマッチしないかもしれません。
日本での流通はこれからのMAGICMARRYは皆さんお馴染みなんであまり説明することも無いかもしれませんがドライ、セミウェット、ウェットと路面を問わず活躍する定番ですね。ALBERTが発売された今ドライで使用する場面は少ないかもしれませんがフロントにMagicMarry、リアにALBERTで組み合わせればわりとどんな場面でも良さそうです。
ただ気になるのが本国ラインナップを見ると
27.5x2.5 Gravity Pro/SOFT
29x2.5 Trail Pro/ULTRASOFT
29x2.5 Gravity Pro/ULTRASOFT
と、かなりラインナップを絞っていること
ドライ〜セミウェットをALBERTに、ウェット〜マッドをShreddaにと分けた中で中間的な立ち位置になったこのタイヤを減らしたのでしょうか。しかしラインナップしているモデルは的確だと思います
Shredda Frontはもう潔く29x2.5 Gravity Pro/ULTRASOFTの1ラインナップのみ。潔いですがそれでいいとおもいます。これを必要とする人はこの組み合わせでしか使いません。Shredda Rearはマレット運用も考えて27.5がありますね。高いノブと広く空いたトレッドパターンからウェット、マッド向けかと思われますが開発側の意図としてeMTBに向けた設計でもあると聞きました。
ALBERTにGravity PRO/SOFTの組み合わせが登場したのが個人的にはとても評価できるところで、十分な強度、耐パンク性能のGravity PROと転がりの軽いSOFTのコンパウンドは後輪に最適ではないかと思います。
フロントにALBERTもしくはMagicMarryのTrail PRO/ULTRASOFT
リアにALBERT GRAVITY PRO/SOFT
この組み合わせにするとフロントは目方が軽くハイグリップ、リアは転がりが軽く加えて過剰なグリップでカッティやルーストの邪魔をせずしかし耐パンク性能は担保する、という遊びに適した組み合わせではないかと思います。
わたしはビビリなので前後輪ともにGRAVITY PRO/ULTRASOFTでした。
これは余談ですが流通について
日本ではまだ殆ど流通していませんね。当店も現時点でやっと1ダース入荷したくらいです。
写真はWHISTLER VILLAGEの中にあるBIKE FANATICにあったストック分。現在の当店と同じくらいの量です。
色んなショップを見て回りましたがSCHWALBEが置いてあったのはここだけでした。あとはもうMAXXIS天国。9割MAXXISです。
フロント
リア
国内で1ヵ月、WHISTLERで半月ほど乗ったあとの状態です。
オフロード走行時間だけで50時間は超えているはずです。アプローチの舗装路や登坂を含めるともっとでしょうか。
リアはさすがにブレーキングでエッジが削れていますがまだまだ余裕で行けそうです。フロントは8分は残っていますね。
こんなところばかりをライドしていた割にはしっかりもっています。
今回は私含め4名で行ったのですが私以外は全員がMAXXISでした。
他社は追従するのか?
生産規模の大きさの問題もあってか自転車のタイヤメーカーは比較的保守的というか何年もモデルチェンジをしない、という印象が強いのです。そんな中登場したラジアルケーシングタイヤは革新をもたらしたと言って過言ではないと思います。別の技術をもってラジアルケーシングの性能に迫るより素直にラジアルケーシング採用したタイヤを開発していく、あるいはもうすでに進めているのではないかなと思います。
とくに王者MAXXISは自転車用ラジアルタイヤはロードバイク用で10年以上前に一度先鞭をつけているので無視はしていない筈です。
SCHWALBEがラジアルケーシングタイヤを世に放ってもうすぐ2年。来年のシーオッタークラッシックが楽しみですね。
MAXXIS RADIALE
もしかして持っていたんじゃないかなと思って探してみたら頭の上にありました。
これ、どうして短命に終わったんでしたっけ? 思い出せません。
自転車用としてラジアルケーシングタイヤが普及しなかった理由としてタイヤの変形量が大きく動力が人力である自転車ではロスが多く不向き、なんて話をどこかで耳にしました。確かにそれはその通りかも。
SCHWALBE ラジアルケーシングタイヤを使用してふと思い出したのが鉄沢さんの組んだARAYA ADX-1にVELOFLEXのRecord Tubelerを貼ったホイールに乗った時のこと。すごく乗り心地が良くてタイヤが路面に貼り付いて、なのに軽くてしっかり加速する。当時すでにコンプリートホイール全盛だったのですが、なんて気持ちのいいホイールなんだと感嘆したものです。タイヤが地面から離れているときは加速もしないしグリップもしない、なんならブレーキも効かない。空気圧を上げて路面との接地面積を減らして摩擦抵抗を減らそうとする考え方はナンセンスなんだ、とどこかで教わったことを思い出しました。もう20年も昔の話ですが