2023年02月18日

GT ZASKAR LT

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GT ZASKAR LTに興味を持っていただいたお客さんとそれならばということで試乗に行ってきました。セイカ君ありがとう。
目いっぱいカスタムした車両ですので吊るしの状態の性能とは大きく異なりますが、知りたいのはこのバイクの伸び代、フレームのポテンシャルなので丁度うってつけだったのです。
3時間ほど里山を駆け巡ってしっかりと堪能していただきました。
私の感想も聞きたい、とのことでしたので僭越ではありますのが少し語らせていただきます。

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OHLINS RFX34 M2 FORK
MAGURA MT TRAIL SL BRAKES
FORMOSA AM35 CARBON WHEEL
FORMOSA アルミクランク160mm
NUKEPROOF COMPONENTS
SRAM GX EAGLE DRIVETRAIN
CHRISKING HEADSET&BB
SCHWALBE TIRES
11.8kg(W/O PEDALS)

ざっくり挙げるだけでこれくらいの部品変更を行っています。フレーム以外の純正パーツはTranzXのシートポストのみ、と言った方が早いでしょうか。シートポストだけ交換しなかったのは、ちゃんと上がって下がればなんでもいいか(雑)と思っていたのですがちょっとばっかしガタが多めで動きが渋いかなと。換えたいかも(他人のだ)
zasker lt eliteが吊るしの状態で15.8kgありますので丁度4kgのダイエットです。25%のダイエットは相当です。


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比較対象、というわけではないけれどお客さんの希望でもう一つ用意した私物のMonkey98ST9χ
何が改かと言われたらもともと10/135だったドロップアウトを一昨年12/142に挿し替えてもらいました。12/148にせず敢えてのレガシー規格
アップダウンが頻繁でドロッパーや変速操作の多いトレイルでのフロントダブルはフロントシングルに慣れた身体にはちょっと操作が忙しかったな。
兎に角乗り心地のいいバイクで登坂はシッティングでもダンシングでもモリモリ気持ちよくトラクションが掛かって登ります。
ダウンヒルも昨今のHTトレイルバイクほどは攻められないものの過不足なくこなせます。ベンドしたシートチューブのお陰で快適な登坂性能を実現している反面シートポストが底まで刺さらないのでドロッパーポストの下げ代に制限があるのが難点といえば難点。あと1インチ下げられたなら結構変わると思います。
そもそもこのバイクの私のコンセプトが「自走で行くトラディショナルなMTBサイクリング」なので煩雑な操作のフロントダブルも下がらないシートポストも特別問題があるわけではないのです。

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ZASKAR LT ELITE
兎に角よくしなるフレーム
昔のTripleTriangleのフレームはシートステイとシートチューブが交差する点で溶接していたのでがっちりしている、という印象だったのですが今作はシートステイがシートチューブをスルーしてトップチューブに直で着けているお陰か硬さを感じなません。チェーンステイ450mmとやや長めなことも相まってアルミながらしっかりとしなって路面を捉えている感じがしました。シート角75°はトレンド通りでレスポンスは早め。
リアタイヤはシュワルベのダウンカントリータイヤWICKIEDWILLでフレームとのバランスもよろしい。リアタイアはURTRA SOFTやMAX GRIPのような過剰にグリップするものだとフレームが負けてちぐはぐな乗り心地になるんではないかと予想。この辺RMBのGROWLERなんかとは大きく違うところだと思います。GROWLERはENDUROに寄せてるけどZASKERはどちらかといえばXCに寄せてる。
個人的には後輪にMINION SSとかROCKRAZOR合わせたら面白いかも。超玄人向きになりそうだけど

ソフトなリアに対してヘッドからBBにかけては充分な剛性があります。
今回は軽量重視で34フォーク入れましたがもっと下り向きにするなら35/36フォークでも楽しめます。(デフォルトは35SLV)ヘッドアングル66°はややスラック気味とはいえ昨今のバイクでは珍しいというほどでもなく実際に操作してみると癖のないハンドリングで曲がりやすく、かつ真っ直ぐ走りやすかったです。最近のバイクはサドルに腰かけた状態からペダルを水平にしてそのまま立ち上がるだけでいい感じのニュートラルポジションがとりやすくなっていますね。
同じSサイズで比較するとHA63°でRC417のKONA HONZO ESDがホイールベース1186mmで、HA66°RC450のZASKAR LTが1181mmと5mmしか差が無いのはなかなか興味深かったですね。まぁHONZO ESDはHT ENDUROなのですが。

ZASKARはワールドカップでXC、DH、スラローム、トライアルで優勝したことのある唯一のバイクなのですが、この「なんにでも使える」という懐の太さは今作でもしっかりと根底にあるように思います。軽快なXCバイク的なモディファイからハードに下るエンデューロバイク的なモディファイまで、好みに応じていかようにでも姿を変える。そんな柔軟さと懐の広さを持っています。用途に合わせて先鋭化したバイクが多い中、こういうバイクは珍しいのではないでしょうか。
価格帯的には入門〜中級くらいですがフレームのポテンシャルは充分で、人間と一緒に成長して行ける、長く付き合えるバイクだと思います。(個人的にはフレーム販売があってもいいかな)
最近のバイクはあまりメーカー出荷時のジオメトリを大きく崩すようなモディファイは推奨されていないですが、これはフォークの若干のロングストローク化はもちろん、BBドロップが少なめなのでショートストローク化も面白いかもしれません。SIDの120mmあたり突っ込んでもBBドロップ60mmくらい? HA66.5°SA75.5°くらいならこれはこれで。

HONZO ESDやGROWLERほどDHでの速さは得られないし、SCALEやEPIC HTレベルでXCレースに使えるかと言われたらそれも無理だと思うけれどもこれ1台で何でも楽しい。中途半端という言葉でまとめるのはあまりにリスペクトが無いと思うので敢えて大げさな表現をするならば「This is MTB」でしょうか。

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2時間ほど山の中をぐるぐると走りました。
元エリートXCライダーだけあってめちゃくちゃ速いです。CXもロードも速い。
ハンドル幅560mmの古のXCバイクの時代から乗り続けてきた方はなかなか昨今のMTBのセッティングにシフトしにくいのですが、乗り始めて程なくしてバイクのスイートスポットを見つけ、操作にも慣れたようでがんがん飛ばしていました。

「29インチはタイトターンが苦手」
「最近のバイクはハンドル幅が広くて木にぶつける」
これ、結構ベテランライダーから言われるも、私はそんな風に感じたことは無かったので今一つピンとこなかったのですがライド中に「29インチはハンドル切るとつま先にタイヤが当たる」と言われて漸く腑に落ちました。
昔のバイクはヘッドアングル立っていて、XCライダーなら下りでもサドルもいちいち下げて乗らなかったのでハンドルを細かく切って曲がることが多かったんですよね。
で、今のバイクはフォークの性能も良くなり車輪径も大きくなったのでバイクを傾けてもハンドルが大きく切れ込まない。この時ドロッパーポストでサドルを下げてしっかりとリーンアウトしてあげることで低速タイトターンでもしっかりと曲げられるんです、と伝えると納得していただいてちょっと8の字で練習。すぐにコツを掴んだようでスムースに走っておられました。
最近のバイクのハンドル幅の広さ、ブレーキの握り方、フォームなどアップデートすることでまたもう一つMTBが面白くなるはずです。

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クランク160mm
最初は違和感あったようですが、すぐに慣れたようです。
で、慣れるとむしろこっちのがいいかなと。
想像外のところで食いつかれました。
まぁ、ペダルクリアランスが増えて障害物にヒットしにくくなるしスタンディング時に股関節に余裕もできます。長いクランクよりトルクは掛かりにくいのですが長いクランクは上手にペダリングできないと上半身がローリングしてバランス崩しやすかったりしますからね。疲れてくるとやりがちです。
ちなみに店主はだいたい175mmです。いっぱい余ってるんで仕方なしです…

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お客さんがSPDだったので久々に引っ張り出してきたSH-MT90
もう15年選手か。久々に履いたけど相変わらず良いです。傑作
posted by オガワサイクル 店主 at 21:33| Comment(0) | 日記